5月30日に公開された「新宿スワン」を早速新宿のTOHOシネマで観てきました。


以下は、新宿スワン未見の方にはネタバレとなってしまうため、注意して下さい。


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総評としては、豪華な役者を使ったひどい三文芝居、テーマもへったくれもない、お粗末な映画、というのが正直なところ。


良い点は、山田孝之がイケメン、沢尻エリカが可愛い、山田優は綺麗、綾野剛の表情が主人公の漫画のタツヒコに似てる、くらいなもんです。


普通に映画の感想としてツッコミどころを挙げていくと50個以上は優にこえそうなので、スカウトマン目線で、新宿スワンの批評をお届けしたいと思います。


大前提として、この映画は原作自体が2000年初頭を舞台としており、描かれるスカウトの話も全て十年以上前の出来事であるため、どうしても2015年のスカウトの現在と比べると、大きな隔たりがある。


沢尻エリカ演ずるアゲハが「まぼろしの王子様」という絵本を持っていることが示す通り、これは歌舞伎町のスカウトマンを描いた一種のファンタジーであることが見てとれるのだが、どうにも辻褄の合わないダークファンタジーに成り下がっているのだ。


一つ一つのエピソードが誇張されており、あまりに現実離れしている。しかしそれが寓話として成立していないことこそが、この映画の駄作たる所以といえよう。


たとえば、沢尻エリカ演ずるアゲハとタツヒコが風俗店舗から逃げ出すシーン。


タツヒコは何故か紹介している女性を危険な店に置き去りにして、二人は歌舞伎町を意気揚々と駆け出していくのだ。


あれだけ紹介する女性を不幸にしないなどとのたまっていたにも関わらず、関係の無い女性を救い、紹介するはずの女性を置いてけぼりにするタツヒコに、無責任過ぎると突っ込みたくて仕方がない。


歌舞伎町を楽しげに駆け出していく二人の姿も、あまりに突拍子が無さ過ぎて、全く爽快感を感じないのだ。


また、自殺した紹介者のキャバ嬢に対してタツヒコが責任感を感じているのも束の間、一番街らしき街(そもそも一番街でスカウトすることはないし、スカウトにとって重要な通りでもない)を歩きながら今までに紹介した女性たちが「タツヒコ〜」と手を振る姿や感謝する姿を確認すると、呆気なく自殺した女性のことを忘れる主人公の恐ろしいほどの呑気さ。


この二つのエピソードだけでも、タツヒコの「紹介する女性を幸せにする」というキャラ設定が大きく矛盾していることが分かる。


スカウトマンとしては物凄く重要なテーマであるため、ここをおざなりにされてしまうと、どうにも腑に落ちないし、むしろ「スカウトマンなんて適当だし、こんなもんだよ」という別の真意があるのだろうかと疑ってしまう。


そもそも、登場人物のほとんどがスーツで、且つスカウトマンらしき容貌、風体の人物がいないことも気になる。もっといい人選あっただろうと思うのだが、そのあたりのリアリティにはこだわっていないのか。


原作が面白かっただけに、素材を上手く調理できていない映画版が、至極残念に思えて仕方ない。


園子温も、愛のむきだしや、冷たい熱帯魚は物凄く面白かったのに、地獄でなぜ悪い、TOKYO TRIBEは酷かったが、新宿スワンはそれを輪にかけて酷い出来だった。


最後、次作があるような含みを持した終わり方だったが、園子温監督だったら、絶対に観ないだろう。


スカウトマンなだけに、本作は非常に残念な思いに駆られた映画であった。


Twitter→@dekaseginavisk